下賀茂温泉 藤波荘

季節は10月に入り、温泉地は秋の行楽シーズンとなる。

現在は、カメラと言えばデジタルカメラだが、ほんの10年ほど前までは、まだまだ銀塩カメラが主流であった。そのカメラの必需品と言えるフィルムが、一年で一番売れる時期が、この秋のシーズンだと、業界の友人から聞いたことがある。

山の葉が、北のほうから、緑から黄色、または赤色に染まり、その紅葉を愛でるために、人は旅に出る。

だが、紅葉の時期は、あっという間に終わる。その短い間を多くの観光客が訪れ、またあの高速道路の1000円乗り放題の週末限定割引が拍車をかけ、道路は大渋滞。

気温も下がり、あたたかい温泉が恋しくなるこの季節には、温泉と紅葉との相性は抜群で、日本人にとってたまらない組み合わせなのだろう。

しかし、昔から私は、その温泉地のトップシーズンには出かけないことにしている。理由は単純。人が多いから。

普段、東京という大都会に住んでいる身にとって、温泉旅行には、あまりに多くの人を見たくないからだ。

そんな私が、この時期、首都圏在住の方にオススメなのが、平日の南伊豆。

伊豆半島は、高速道路はなく、紅葉の名所も数少ない。海水浴で賑わう8月の喧騒とは違い、秋から冬にかけては、その温暖な気候とともに、良質の温泉が、私を出迎えてくれる。美味しい魚介類の料理も忘れてはならない。

そして、平日ならば、是非クルマで南伊豆まで足を伸ばしてもらいたい。特に、海岸線を走るドライブは快適そのもの。

南伊豆の温泉地と言えば、下賀茂温泉。下田からさらに南にあり、特に温泉街などはなく、海に面しているのでもなく、鄙びた印象の場所にある。

「藤波荘」の貸切露天風呂

「藤波荘」の貸切露天風呂

その中でオススメなのが「藤波荘」。たった8室の宿ながら、多くのリピーター客に支えられている隠れた名旅館だ。

この宿の特徴は、男女別大浴場がなく、その代わり、4つの貸切風呂が備わっているところ。そして、すべての湯舟が豊富な自家源泉による「源泉100%かけ流し」だという点も素晴らしい。露天風呂付き客室や、高温の源泉を利用したサウナ付き客室もある。

専務さん自ら包丁を握る、伊勢海老、鮑などの新鮮な海鮮料理も、この宿のもうひとつの魅力。冬場になれば、下関から取り寄せるフグ料理も楽しめる。

この宿は小さい宿にも関わらず、伊豆の小さな温泉宿の魅力がたくさん詰まっている。そして、昭和11年生まれながら、今でも元気に着物で接客してくれる女将さんの優しい笑顔が忘れられない。

藤波荘/静岡・下賀茂温泉

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