今年の6月に、2年ぶりに静楓亭(せいふうてい)に取材に行った。全室、露天風呂付き客室の宿である。福島県、会津磐梯山のふもと、猪苗代湖に近い、自然に囲まれたところにある。周辺は山林だらけだ。
いわゆる一軒宿なのだが、ここの客室露天風呂は桁違いに凄い。
小さな宿では男女別大浴場に匹敵するぐらいの巨大な湯舟に、源泉100%かけ流しというのは、あまりにも贅沢すぎる。最初訪れるほとんどのお客は、一様に驚くという。
この宿のもうひとつの特徴は、全館バリアフリー対応だということ。駐車場から客室はもちろん、トイレ、はたまた客室露天風呂まで、車椅子で行けるという徹底ぶりだ。平屋造りになっているのも、その理由からだ。
この宿を率いるのは、荒井和夫社長。昭和4年生まれというから、今年で80歳になられる。そのお歳にも関わらず、毎日のように元気で、自ら庭の手入れ、温泉の管理に忙しくしているところが凄い。
荒井社長の孫の年齢ぐらいの料理長、本間浩二さんは、2003年からこの宿の料理を作り続けている。本間さんがこの宿に入った頃には、お二人で全国の美味しいと言われる料理を食べ歩いたという。
本当の家族のように荒井社長は本間料理長を信頼しているようだ。だからだろうか、この宿の料理も評判が高い。今流行の「地産地消」にこだわらず、旬の厳選された素材を使っての献立は、ひとつひとつ愛情のこもったものばかりだ。
この宿のコンセプトは「親孝行の宿」。全室、露天風呂付き客室の宿だからといって、決してお忍び、不倫カップルの宿ではない。
荒井社長の心意気がそのまま宿のキャラクターとなっている、稀有な宿なのだ。
■露天風呂の宿 静楓亭/福島県・磐梯山麓温泉