新潟県・月岡温泉と言えば、温泉ファンなら、その実力をご存知だろう。月岡温泉の泉質は「含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉(弱アルカリ性 低張性 高温泉)」。いわゆる硫黄泉だ。硫黄成分濃度の高さで知られ、その主成分である硫化水素の含有量は日本で一、二を争う(硫化水素イオンが1kg中20~150mg)。ライバルは万座温泉で、源泉によって1kg中250mg(遊離硫化水素)を超えるとも言われている。ちなみに卵が腐ったニオイは、硫化水素が原因となっている。
しかし、数字上では万座温泉より少ない含有量のはずなのだが、月岡温泉は「硫化水素含有量・日本一」と自慢する。硫黄泉は、現在ひとまとめで呼ばれているが、旧泉質名でいえば「硫黄型」と「硫化水素型」と2種類の泉質となり、それぞれ特徴がある。
月岡温泉は「硫黄型」。それは「硫化水素イオン」が主成分で、湯に溶け込み、アルカリ性の湯に多い。万座温泉などの「硫化水素型」は、「遊離硫化水素」が主成分となっており、酸性の湯に多いという。 しかし、万座のような酸性の湯では、遊離硫化水素は、いわゆる“ガス”なので、非常に揮発しやすい。逆に、月岡温泉のアルカリ性の湯では、成分が陰イオンとして湯に入り込み、保持されやすいのだ。また、源泉温度80℃ほどの万座温泉よりも、適温に近い源泉温度50℃ほどの月岡温泉の方が、成分が安定するとも言われている。結果、よりその成分を実感できるのは月岡温泉になるのではないだろうかという論理だ。
硫黄型硫黄泉の温泉の色は、白濁するか、無色透明が一般的。ところが、硫化水素イオンの含有量が多くなると、美しいエメラルドグリーンとなる。
その神秘的な湯の色は、まさしく自然の恵み、大地の奇跡とも言えるものだ。ただ、注意すべきは、指輪やアクセサリー類を付けて、湯浴みは決してしないこと。この硫黄泉のパワーは、10円玉に湯をかけると、5分も経たぬうちに黒っぽく変色してしまうからだ。
さらに、月岡温泉は、“美人の湯”として知られている。それは、その条件にあげられる“硫黄泉”と“アルカリ性”と、二つの条件を満たしているから。また、“不老長寿の湯”とも言われており、いわゆる生活習慣病に効くという。硫化水素泉は血管拡張作用が高く、高血圧の治療、あるいは予防効果にもいい。
月岡温泉は、硫黄泉であり、ナトリウム-塩化物温泉でもある。昔の人は塩化物温泉のことを「熱の湯」と呼んでいた。塩分濃度が高いほど、カラダの体温を上げる作用があるのだ。だからこそ、湯冷めがしにくい特性も持つ。
月岡温泉の湯宿「広瀬館 ひてんの音(ね)」では、その極上の温泉をかけ流しの状態で体感できる。硫化水素イオン含有20.7mgの月岡5号井と、113mgの月岡6号井を同時に湯舟に注ぎ込んでいる。温泉雰囲気たっぷりの貸切露天風呂もあり、人気の宿となっている。オーナー料理長である、広川健一さんの人柄が表れた絶品料理は、地元でも評判だ。奥さんである美人女将の存在も忘れてはならない。仲睦まじい夫婦の運営する宿は、温泉もそうだが、宿全体が優しい空気に包まれている。
■広瀬館 ひてんの音/新潟県・月岡温泉