「じゃらんnetが無くなる」・・・一般ユーザーも、ホテル旅館関係者も耳を疑う言葉だろう。
じゃらんnetに限らず、楽天トラベルなどネットエージェントと呼ばれる予約サイト花盛りのこの時代に、何を言うかとお叱りと受けるのを承知で言う。
明日、明後日の話ではないが、私は近い将来、こんな時代が来るような気がする。
ここでいう近い将来というのは「3年~10年以内」の話だ。
2010年秋にリクルート社が発表した、じゃらんnet販売手数料の値上げ(8%→10%)は、宿泊施設業界にとっては大きな衝撃であった。
2010年の年末から年明けにかけては、各地でリクルート社の経営陣を呼んで、旅館組合などが、値上げを思いとどまらせる話し合いを行っているらしいが、リクルート社は「断固拒否」の意向らしい。
リクルート社としては、ポイントシステムの拡充が主な目的らしいが、その負担を宿泊施設にも負わせるという様相が、各地で不満が噴出している要因らしい。
値上げは2011年4月1日からのスタートを予定しているらしいが、ここ最近になって、噂にはなっていたが、一休ドットコムも同じく4月からの手数料値上げを実行するらしい。
こんな現象は、数年後、歴史を振り返れば小さいことだろう。
リクルート社も、楽天トラベルも、海外のネットエージェントと同様の、実質20%まで手数料を上げることを目標としている節があるからだ。
では、ネットエージェントは、なぜ値上げを画策するか?
現代の日本は人口が減少する方向に向かっている。
それはつまり、旅行人口が減っていくことを意味する。
じゃらんnet(リクルート社)も営利を追求する企業。
各種サービスやシステムを開発して、売上を上げていくことはするだろうが、それも限界がある。
よって、会社が成長するには、率を上げてでも、宿泊施設側からいただく手数料を増やすしかないのだ。
そして、今回のじゃらんnet側の値上げをしたい「言い分」に、「宿泊予約をさせるためのコスト増」がある。
つまり、サイトに誘導して、予約させるための費用が、数年前より増大しているというのだ。
その大部分を占めるのは、ヤフーであればスポンサーサイトと呼ばれるリスティング広告なるものだ。
一般的な旅行の場合、じゃらんnetのTOPページから検索して、「宿泊日」を選択し、「旅館」を選んで、「地域」を選んで、「温泉地」を選んで、「宿名」を絞り込んで予約すれば完了なのだが、実はこのようなストレートな流れの予約は全体の1割と見られる。
実は宿泊施設の公式HPにアクセスする場合、「宿名で検索」が全体の9割を占める。
つまり、その検索ページには「宿名」に関連した「リスティング広告」が、公式HPの表示の上か、右側に表示される仕組みになっている。
そこで「ポイントを武器」に、ネットエージェントは、「客を横取り」するのだ。
宿泊料金が同じであれば、ポイントが付くところで予約するのが人情。
しかし、エージェント経由の予約であれば、宿泊施設側は、2人で30,000円の宿泊料金の場合、3,000円(10%の場合)も、リクルート社に支払わなくてはならない。
私は、何度も、ブログや、ツイッターで発言しているが、これはどう考えてもおかしい。
本来、手数料は、じゃらんnetのTOPページから入って予約が完了すれば、宿側が手数料を払うもの。
ところが、宿名検索のページにリスティング広告(私はこれを待ち伏せ広告と呼ぶ)をはられ、そこで直接予約から手数料のかかるエージェント予約に切り替えさせるのは商道徳的にもおかしい。
こんな待ち伏せ広告をうつために、宿側に手数料を徴収するなど、時代劇に出てくる悪代官のする所業。
なぜ、こんな理不尽な仕打ちを受けてまで、なぜ全国の宿泊施設は声をあげない?
いや、箱根のように一部声を上げているようだが、リクルート社を論破できる人材がいないのか・・・。
それは、やはりインターネットに関して、熟知しているネットエージェント側と、まったくと言っていいほど無知に近い宿泊施設側の差がこの問題の根底にある。
じゃらんnetは、「どうせ一部反対意見が出るだろうが、結果的には値上げには応じざるを得ないだろう。」と高をくくっている。
集客活動を、公式HPを強化し、自ら企画実行するのではなく、じゃらんnetなどのネットエージェントに頼ってきた(丸投げしてきた)ツケがあるからこそ、じゃらんnetにはなぜか余裕を感じさせるのだ。
じゃらんnetは、毎年20%の成長を目指して、今回の値上げも実行したいらしいが、ほとんどの宿泊施設側にとっては、20%成長など夢のまた夢。
歴史は繰り返される。
ある一方が(支配者側が)栄華を極めるなか、ある一方が(支配される側が)不満を募らせれば、それは最終的に「革命」「政変」が起きる。
日本に置き換えれば、「幕末」にも似ている。
「江戸幕府」が、じゃらんnet、楽天トラベル、るるぶトラベルなどのネットエージェント。
そして、私が冒頭で「じゃらんnetが無くなる」と予言したのは、実は、現代の日本にも「黒船」が来航しているからだ。
私の言う「黒船」とはズバリ、Googleの事である。
Googleは、現在、地球上の人類の知的財産をすべてデータベース化しようとしている。
その流れで最近では「電子書籍」も注目を浴びている。
紙を主体としてきた出版業界は、今や嵐の真っただ中。
その前にも、テレビ・新聞・ラジオなどの旧メディア陣営に、大きな衝撃を与えた。
つい最近まで、人気産業だったテレビ業界も、今や大リストラが敢行されているのが実情。
つまり、ここ10年を振り返ると、Googleを中心としたネット企業は、あらゆる産業を再編成、もしくは破壊してきた。
それは歴史の中では必然のことであり、時代に付いていけないものは淘汰され、時流に乗れば生き残る。
実は、じゃらんnet、楽天トラベルも、一番恐れているのは、Google。
書籍データベース化が一段落したら、今度はこれからの21世紀の成長産業とも言える観光業界のデータベース化かもしれない。
Googleの検索機能は、もうすぐ驚くべき進化を見せるとの噂が広がっている。
人工知能(AI)を擁し、「予測検索」を完成させ、ユーザーがキーワードを入力しなくてもユーザーの趣味嗜好を考えて検索してくれる「自律検索」の時代がもうすぐやってくる。
宿泊施設側の公式HPに、これらのオープンソースを組み入れることによって、じゃらんnetなどのような旧態依然の検索が必要なくなり、ユーザーはGoogleを通して、ダイレクトに宿泊施設に予約を入れられるようになる。
つまり、宿側にとっては、手数料のかからない直接予約となる。
これこそ、まさに「明治維新」と同じ政変。
そんな「大政奉還」を目指して、微力ながら、私は今日も頑張っている。
いま、私が手掛けている宿のオフィシャルサイトは、まさに次世代型と言えるだろう。
それには「貸切温泉どっとこむ」の存在も不可欠だ。
でも、じゃらんnetもしぶとく「クチコミサイト」として生き残っていくような気もするなあ。