「大竹さん、いい温泉宿教えて。」
久々に会う知人が、よく私にかける言葉である。
そこで、私は、いつもの「誰と?」「いつ?」「目的は?」「予算は?」・・・などと相手に聞くのが通例となっているが、「コストパフォーマンス」だけで考えると、いい宿探しの目安になる項目がある。
それは、ズバリ「オーナー料理長の宿」。
つまり、社長と料理長を兼任している温泉宿の事である。
料理長は、食事でお客を満足させようとする。
しかし、そこにかけられるコストがある。
通常、そのコストを考えるのは、社長であり経営責任者。
その経営責任者が、コスト度外視で、献立を考える場合があるという事。
それは食材の仕入れ値といったお金の問題だけでなく、手間をかける料理を作るという意味も含まれる。
この宿泊料金で、こんな豪華で美味しいものがいただけるなんて!・・・と感動すら覚える献立に出会う事があるのだ。
いくつか例をあげよう。
長野県・美ヶ原温泉「旅館すぎもと」は、知る人ぞ知る酒の肴料理の宿。そして、絶品の蕎麦を出す名宿。
山梨県・甲府の武田神社近くの「坐忘庵」の朝食の鯛めしも美味かった。
そして、九州は熊本の阿蘇内牧温泉の秘湯を守る会の宿「親和苑」。
まだ30代後半の若き料理長は、厳密に言えばまだ父が社長であるが、将来は後を継ぐ身。
彼の作る料理は、とても1万円台の宿のものとは思えない。
高級懐石料理宿のような、コースの途中に「お口直し」(ソルベなど)が入るのも驚くが、ひとつひとつ献立を見ても、とにかく大盤振る舞いである事が分かる。
もちろん、関西で修業してきたその腕前も確かだ。
聞けば、昨年の2012年7月の阿蘇の大洪水で、宿の一階部分が水浸しにされ、大改装を余儀なくされ、ようやく年末に再オープンできたばかり。
大変な災難だったろうが、その危機をバネにして、新築されたモダンなロビーや食事処は、まさに高級宿の雰囲気。
これからも、自家農園のコメや野菜を使った絶品の料理を作り続け、多くの客たちを喜ばせていただきたいものだ。
■長野県・美ヶ原温泉「旅館すぎもと」
http://www.kashikiri-onsen.com/chubu/nagano/utukusi/sugimoto.html
■山梨県・積翠寺温泉「古湯坊 坐忘庵」
http://www.kashikiri-onsen.com/chubu/yamanashi/sekisuiji/koyubo.html
■熊本県・阿蘇内牧温泉「親和苑」
http://www.kashikiri-onsen.com/kyusyu/kumamoto/asouchinomaki/shinwaen.html