2014年の夏、国内の宿泊予約に革命が起きる?
業界の方ならほとんどの方がご存じの、例の「Yahoo!トラベル」の直販化だ。
つまり、今までは、「じゃらんnet」はじめ、宿泊予約事業者から提供を受けた宿泊プランを掲載し、予約が成立すると、それらの事業者から手数料を受け取っていた。
それが一転、予約事業者を通さず、宿泊施設と直接契約を結ぶというビジネスモデルに変化させるという事なのだ。
しかも、宿泊施設が「Yahoo!トラベル」に情報を掲載する費用としては、予約成立時の手数料5.3%を支払うのみなのだ。
ちょっと前に問題になった、「じゃらんnet」の手数料8%→10%の値上げ騒動が記憶に新しいが、「Yahoo!トラベル」は半額に近い手数料を武器に、宿泊施設の“横取り”を狙う。
「Yahoo!トラベル」の武器は、それだけではない。
予約サイト2強と呼ばれる「じゃらんnet」と「楽天トラベル」だが、ユーザー側にとっては、リクルートポイント(2%)や、楽天ポイント(1%)が貯まるといった特典が付いていた。
しかし、リクルートポイントは使えるお店や機会が少ない事で不満が残り、楽天ポイントも「楽天市場」という日本最大級のショッピングサイトで利用できるメリットがあるが、ポイント還元率は1%と少ない。
ポイントと言えば、リクルートポイントはもちろん、楽天ポイントもその利用者数から比べれば圧倒的なユーザー数を持つポイント会社が日本にあった。
その名はCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が運営する「Tカード」。
DVD&CDレンタルのツタヤだけでなく、全国にファミリーマートのような大型チェーンなど加盟店6万店を持ち、ユーザーであるTポイント会員は、なんと4600万人を超え、実に日本の人口の3分の1以上がTカードを持っている計算になる。
もはや、リクルートポイント、楽天ポイントの敵ではない。
その日本最強のポイント会社と、日本で一番アクセスが多いヤフーが同盟を組んだのだから、リクルートも楽天も相当な危機感を肌に感じているはずだ。
宿泊施設の「じゃらんnet」離れ、「楽天トラベル」離れも、徐々に進んでいくだろう。
それは先に書いた手数料5.3%という、数字の低さにある。
しかも、その5.3%の中身は、驚くべきことにその大半である5%は、ユーザーにポイントとして還元してしまうという事なのだ。
じゃらんの2%、楽天の1%と比べても、ケンカにもならない。
残りの0.3%はポイント手数料という名目で、CCCが運営費としてもらう。
つまり、「Yahoo!トラベル」は、一切手数料は受け取らない方式で、広告収入のみで運営していくビジネスモデルにしていくのだ。
これは、昨年2013年10月に発表した「Yahoo!ショッピング」手数料無料化と同じ流れだ。
そして、これも同じ流れだが、自社サイトへのリンクがOKになった事。
じゃらんや楽天では、あり得ない、まさかの公式自社サイトへのリンクが認められた事で、自社サイトの集客ツールとしても「Yahoo!トラベル」は使えるという点だ。
元々、手数料といった5.3%はユーザーのポイントのため。
「Yahoo!トラベル」側は、一切成約時の手数料は取らない。
取らないという事は、「Yahoo!トラベル」を経由して、自社サイトで予約しても構わないという意味でもあるのだ。
3年前にこのブログで「じゃらんネットが無くなる日」というタイトルで書いた。
それがついに現実化しようとしている。
予約サイトの高額な手数料に頭を悩ませていた宿泊室側にとって、朗報である事に違いはない。
宿泊室側は、これまで以上に、自社サイトを強化していくべきであろう。
「Yahoo!トラベル」に支払う5.3%は、集客力の費用、つまり広告費と考えればいい。
今まで、予約サイトのポイントに対抗して、自社予約特典を付けていた宿は、今後、「Yahoo!トラベル」のTポイントに対抗して、予約特典を考えなければならない。
しかし、それは今まで以上に敵が強大になっただけという見方もある。
ユーザーに対してのTポイント5%還元は、自社サイト予約(直接予約)の客をどれだけ奪うのか、心配な宿泊施設は多いだろう。
自社サイトへのリンクが自由になった事だけで、喜んでいいとは思えない。
「Yahoo!トラベル」がこれらのスタイルになって生まれ変わるのが2014年夏。
とにかく、今は、宿泊予約の革命前夜という時期である事は確かだろう。
私にとっても、すごく興味深い時期が到来した感がある。