最近、銀行出身の旅館経営に携わる方に会った。
彼は最近の予約動向に関して、「最近は、じゃらんnet、楽天トラベルなどの予約サイトを無視できない。実際、前年比で、じゃらんnetも、楽天トラベル経由の予約が増えている。これからもネット予約サイトに力を入れていきたい」・・・という考えらしい。
数字だけで見れば、その通り。
しかし、それには業界独特の“ウラ読み”が必要だ。
予約サイトのTOPページからアクセスして、そのままその宿を選択して予約するのが、本来の予約数。
しかし、ネットの場合、そう簡単ではない。
宿名を知っていて、その宿をネット検索して、公式HPをチェックして、それから複数ある予約サイトから予約する可能性があるからだ。
ご存知のように、予約サイトから手続きすれば、ポイントが付く。
アカウントを持っていれば、公式HPで、住所、電話番号など個人情報を入力する必要もない。
ビジネスホテルは別にして、観光目的の旅館ホテル選びは、予約サイトだけで完結させる場合は少数派だろう。
ほとんどの場合、公式HPを閲覧し、クチコミサイトもチェックするものと推察できる。
雑誌、テレビなどを見て、宿名を知っている場合もある。
弊社調査によると、予約サイトからの予約成立は、実際の数字の10~30%と出た。
つまり、その月のある予約サイトの予約数が100件だとすれば、実際その予約サイトの力だけ(TOPページから入って予約した場合)は、10~30件ほどという事。
10から30の差は、公式HPに、予約サイトのポイントに対抗できるような特典を付けているかどうかの差でもある。
つまり、予約サイトの数字が伸びてきているとの兆候があるという事は、公式HPに何らかの対策が必要だというサインでもある。
さらに忘れてならないのは、多くの予約サイトは、「宿名」で検索連動広告を出している事。
GoogleやYahooで、宿名で検索すれば、すぐ下か横に、〇〇旅館の予約は予約サイトの△△へ・・・と表示される広告の事。
まさに、客泥棒、手数料泥棒と言っていい。
数日前に、ある旅館関係者から聞いた。
楽天トラベルが、近々、旅館から徴収する手数料(宿泊料金の約10%)を、今まで消費税抜きの宿泊料金で計算していたものを、これから税込みの料金から計算するとの通達があったらしい。
つまり、現在8%の消費税だが、これにも手数料を加算する事で、実質的な値上げである。
じゃらんnetや楽天トラベルなどの予約サイトにとって脅威と見られていたYahoo!トラベル(実質手数料0円を標榜)が、リニューアルオープン間近でトラブルを起こし、さらには震災後の不景気も底を打った状況を見ての判断だろうが、ついに手数料値上げのカウントダウンが始まった。
彼らは18%を目標に、これからも宿泊施設側にとって、モンスター化していくだろう。
それを育てたのも、旅館・ホテルの施設側。
安易に目の前のお客が欲しいゆえの安易な販促戦略がそうさせた。
予約サイトはじめ、旅行代理店出身のコンサルタントに、相談したり、参考にした結果かもしれない。
わが愛する旅館・ホテルよ、早く目を覚ましてほしい。
インターネットという、公平かつ、平等に与えられたインフラを活用すべき。
このままでは、宿泊料金という価格さえ、予約サイトの言いなりになってしまう。
宿泊施設側には、「予約サイトに力を入れていく」のではなく、あくまでも「予約サイトを利用して、自社公式サイトからの予約数を増やす」といった、したたかさが欲しい。
私に言わせれば、その方法、施策は、まだたくさん残っている。