優しい泉質で万人向け/リラックス&美肌の湯
温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg未満で、湧出時の泉温が25℃以上の温泉。このうちpH8.5以上のものを「アルカリ性単純温泉」と呼んでいる。「単純温泉」は温泉成分がそれほど濃くないため(それでも市販の入浴剤の数倍の温泉成分が入っている場合がほとんど)、肌への刺激が少なく、脳卒中など外科手術後のリハビリ、静養に適することから「脳卒中の湯」「中風の湯」「神経痛の湯」とも言う。また、赤ちゃんやデリケートな肌質の方でも安心して入浴でき、「湯あたり」しにくい泉質という事で「家族の湯」とも呼ばれる。特に、弱アルカリ性単純温泉(pH7.5以上)、アルカリ性単純温泉(pH8.5以上)は、肌の古い角質を取ることで、入浴後つるつるすべすべになる事から「美肌の湯」とも称される。そして、泉質別適応症に、自律神経不安定症、不眠症、うつ状態・・・とあるように、メンタルに効く温泉だと分かる。温泉の刺激がマイルドなため、ゆったりとリラックスして湯浴みができる事も大きな特徴。
ちなみに「単純温泉」の「単純」とは、温泉成分が1kgあたり1000mg未満という意味。泉質が単純という意味では決してない。例えば「単純硫黄泉」という泉質名は、特殊成分の総硫黄が基準値以上入っているが、全体の温泉成分(溶存物質)が1kgあたり1000mg未満の場合「単純」の文字が「硫黄泉」の先に付く。
※以下、参考までに・・・「単純」という名前は、古くは1907年発行のドイツ温泉教科書のEinfaches Wasser(単純温泉)の直訳から取ったらしい。ところが1985年以降、ドイツでは「単純」の文字は消され、単に「温泉」とか、「混じりけの無い」「純粋」な温泉という文字に入れ替わっている。・・・※「温泉の百科事典」(丸善出版) p.294より抜粋
「単純温泉」は、温泉地によって溶け込んでいる温泉成分が様々なためそれぞれに細かい個性があるのも事実。硫黄成分や、メタケイ酸の量など、温泉分析書を見ればその特性が多種多様である事が分かる。
その証拠に、温泉法の「新旧泉質名対照表」を参照すると、例えば、「二酸化炭素泉」の略記泉質名は「単純CO₂泉」となる。[元素記号+泉]というのが表記ルール。「単純温泉」の場合は、(溶存物質が1000mg未満のため)元素記号が表記できないためか、10の泉質のうち唯一空欄となっている。「単純温泉」こそ、温泉分析書の陽イオン、陰イオンなどの溶存物質の成分バランスを見なければ、その本当のキャラクターを把握できないという事だ。「単純温泉」を、お弁当の種類で例えれば、「幕ノ内弁当」だろう。お店や地域によって食材が違い、おかずの種類も豊富だからだ。それでいてバランスがいい。「単純に薄い温泉だから刺激も少ない分、効能も小さめ」的に評論している自称温泉ライターは勉強不足と言わざるを得ない。
「単純温泉」は、万人向けの温泉である事と、オールマイティーな意味もあるので、「単純」ではなく「スタンダード」、つまり「標準温泉」と名付けるべきであろう。古今東西、「名湯」と呼ばれるのが多いのも、この泉質なのである。日本国内では、塩化物泉と並んで、一、二を争うほど多い泉質でもある。
・・・「温泉検索どっとこむ」https://www.onsen-k.com/ より。