塩分パックの「熱の湯」/殺菌効果の「傷の湯」
温泉水1kg中に、溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が塩化物(塩素)イオン(Cl⁻)の温泉。
陽イオンの主成分により、「ナトリウム-塩化物泉」、「カルシウム-塩化物泉」、「マグネシウム-塩化物泉」などに分類される。塩分が主成分となっているので、飲用すると塩辛く、塩分濃度が濃い場合やマグネシウムが多い場合は苦く感じられる。「ナトリウム-塩化物泉」の中でも、ナトリウムイオン5.5g(5500mg)/kg 以上,塩化物イオン8.5g(8500mg)/kg 以上。または、塩化ナトリウムとして240mva1/kg 以上の場合「ナトリウム-塩化物強塩泉」という。有馬温泉の「金泉」がその代表例だ。
「塩化物泉」の泉質別適応症は、きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症。
塩分に含む温泉に浸かると、塩分がまるでパックのように身体を覆ってくれる。このパックが汗腺(汗を分泌する器官)を塞ぐので、湯上がり後の体温低下が緩やかになりポカポカ感が長続きするのだ。このため「塩化物泉」は「熱の湯」とも呼ばれる。冷え性は、塩化物泉以外の泉質も適応症として認められることがあるが、塩化物泉は特に効果が高いと考えられる。
同時に、長続きするポカポカ感は、末梢循環障害の改善に役立つだろう。またこの塩分パックは、温泉成分のコーティング効果による保湿作用のため、湯上がり後の皮膚乾燥も抑えてくれる。
皮膚の古い角質を取る、「(弱)アルカリ性単純温泉」「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「硫黄泉」などの、いわゆる「美肌の湯」の温泉に入った後の「塩化物泉」は、塩分コーティング&保湿作用で「仕上げの湯」とも称される。違う泉質の温泉の湯めぐりをする際は、参考にしていただきたい。
また、塩分の殺菌作用で、きりきずや火傷に効果が発揮され「傷の湯」と呼ばれることもある。
飲用の泉質別適応症としては、胃腸の消化液の分泌を促進するため、萎縮性胃炎、便秘がラインナップされている。ちなみに、便秘が飲用の泉質別適応症に入っているのは「塩化物泉」と「硫酸塩泉」だけである。
数年前までは「塩化物泉」は、日本国内では自然湧出する温泉では一番多い泉質だったが、現在は温泉の掘削技術の発達により「単純温泉」が伸びて、この2つの泉質が湧出量のトップを争っている。