角質を軟化させる「美肌の湯」/湯あがり爽快
温泉水1kg中に、溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が炭酸水素イオン(HCO₃⁻)の温泉。
「炭酸水素塩泉」の浴用の泉質別適応症は、きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症となる。
飲用の泉質別適応症は、胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)。
なお、「炭酸水素塩泉」は、陽イオンの主成分により、下記のように分類される。
(1)カルシウム(・マグネシウム)-炭酸水素塩泉(旧泉質名:重炭酸土類泉)
二酸化炭素、鉄などが含有しているケースが多い。また、カルシウムやマグネシウムなどの土類が含まれると、鎮静作用や炎症を抑える効果が得られ、アレルギー性疾患、慢性皮膚病、じんましんなどに良いとされる。
飲泉すると、血糖値を低下させるので、耐糖能異常(糖尿病)にいい。また、利尿作用とともに、尿酸の排泄を促し、高尿酸血症(痛風)、尿路結石に効果的。さらに、胃酸を中和し、胃を活発化し、慢性胃腸障害にもいい。この泉質の抗炎症作用などを利用した吸入療法も人気だ。ところで、この泉質は、石灰質の温泉沈殿物、析出物が生成されることがある。湯口や浴槽の縁によく見ることができる。
(2)ナトリウム-炭酸水素塩泉(旧泉質名:重曹泉)
pH値は、アルカリ性になる確率が高く、ナトリウム-塩化物や、ナトリウム-硫酸塩などが含有しているケースが多い。炭酸水素ナトリウム、つまり重曹は、血行を促すとともに、古い角質を柔らかくする作用がある(乳化現象)。そして、石鹸のように皮脂や汚れを落とし、肌をなめらかに整えるクレンジング効果が期待できるため「美肌の湯」と言われるのだ。さらに、皮脂が減ったため肌の保護力が弱くなることで、肌表面の水分が蒸発しやすくなり、「清涼の湯(冷えの湯)」とも呼ばれる。また、湯上りの乾燥や湯冷めをしやすい泉質であるが、炭酸水素が、高温下で角質や皮脂を加水分解する過程で、水素と二酸化炭素のガスが発生する事から、殺菌作用と代謝促進作用が生まれる。したがって、浴用の泉質別適応症に、きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症があるのだ。
飲泉すると、胃酸を中和し、炭酸ガスを発生して胃の粘膜を刺激し、活発にして消化を助ける。だからこそ、飲用の泉質別適応症に、胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎があるのだ。また、肝汁の分泌を促し、肝臓や膵臓の働きを良くするので、胆石症、慢性胆嚢炎、糖尿病などにいいとされる。ヨーロッパでは「肝臓の湯」の飲泉療法としてポピュラーなのだ。さらに吸入療法も盛んで、重曹の緩衝作用と気道内の粘膜を溶かす作用を利用して、上気道の慢性炎症、痰の出にくい慢性閉塞性呼吸器疾患などに良く用いられる。
ちなみに、陰イオンの主成分が炭酸水素イオン(HCO₃⁻)の「炭酸水素塩泉」と、肌に気泡が付き遊離炭酸(CO₂)が基準値以上含有する「二酸化炭素泉(旧泉質名:炭酸泉)」とは別の泉質。適応症も一部を除いて違う。
・・・「温泉検索どっとこむ」https://www.onsen-k.com/ より。