カラダの芯まで届く「婦人の湯」
温泉水1kg中に、総鉄イオン(鉄Ⅱ+鉄Ⅲ)を20mg以上含有している温泉。※総鉄イオン[Fe²⁺(フェロイオン)+Fe³⁺(フェリイオン)]
「含鉄泉」は「婦人の湯」と呼ばれることがある。これは古くから、貧血、更年期障害、月経障害、冷え性など女性に見られがちな症状に効果的と言われているからだ。
また、入浴するとよく温まるので、リウマチ性疾患、更年期障害、子宮発育不全、慢性湿疹、苔癬(たいせん)等に効果があるとされている。
ところが、平成26年の温泉法改訂では、浴用の泉質別適応症には「なし」となっている。
それは科学的な根拠を重視した改訂のためそうなったらしいが、改訂前は経験値的なもので適応症が決められたという。しかし、「鉄泉」単体はともかく、「塩化物泉」と結びつく場合は、間違いなくカラダの芯まで温めてくれる。
飲用の泉質別適応症は、鉄欠乏性貧血とある。胃酸の分泌を高め、鉄を吸収しやすくなる。
ただ、注意点は、飲用した直後にお茶やコーヒーなどタンニンを含む飲み物の摂取は控えたほうがいいだろう。理由は、鉄分とタンニンが結びついてしまい、鉄の吸収を妨いでしまうから。
「含鉄泉」は湧出の際は無色透明だが、空気に触れると、次第に鉄の酸化が進み赤褐色になる特徴がある。
「赤湯」と言われるのがそれだ。日本国内では含鉄泉は珍しく、「二酸化炭素泉」「含よう素泉」「放射能泉」と同様、間違いなく稀少泉質のひとつ。
なお、カラダに効果があるのは2価の鉄で、参加して3価になると効果は減少する。
ちなみに「含鉄泉」は、陰イオンの炭酸水素イオンと結びつく「炭酸水素塩型(炭酸鉄型)」と、硫酸イオンと結びつく「硫酸塩型(硫酸鉄型)」に分類される。
上記で記した特徴があるのが、炭酸水素塩型。
「硫酸塩型」は、旧泉質名で言えば「緑礬泉(りょくばんせん)」。それは「皮膚病の湯」と呼ばれ、強い酸性を示し、殺菌力と保温効果が高い。単純鉄泉(硫酸塩型)の場合、湯の色は淡い緑色になる事が多い。