11月23日にこんなニュースがネットを賑わした。
・・・・・インターネット宿泊予約サイトの攻勢が止まらない。楽天トラベルと並ぶ日本最大級の宿泊予約サイト「じゃらんnet(ネット)」を運営するリクルートが、利用者へのポイントサービス強化にともない、宿泊施設側に販売手数料率の引き上げを通告。施設側から反発が相次ぐ事態となっている。ただ、急増する利用者の利便性向上を盾にリクルート側は引かない構えで、他サイトにも同様の動きが広がりそうだ。~「産経ニュース」より
これは、簡単に言えば「手数料の値上げ」=「宿泊施設の負担増」のニュース。
一般の旅行者には直接関係ない、宿泊施設側の問題。
リクルート社の“言い訳”(言い分)は以下の通り。
・・・・・リクルートは、じゃらんネットのポイント(1ポイント=1円)を来年4月以降、グループ内の飲食総合情報サイトなどと共通化すると発表。飲食店予約など他サービスで付与されるポイントも、じゃらんネットの旅行商品に使えるようにする。
また、現行はポイントの使用を旅行代金の10%以内(3万円の旅行なら3000ポイントまで)に限定していたが、これを最大3万ポイントまで使えるようにする。
グループ内のさまざまなサービスで得たポイントが3万ポイントに達すれば、3万円の旅行を無料で購入できる。
今回のポイントサービス強化は、同様のサービスで人気のライバル・楽天トラベルに対抗したもの。
~「産経ニュース」より
ポイントサービス強化はいいとしても、同時に販売手数料の値上げを発表したので、宿泊施設側は驚いたわけだ。
新制度で利用者に付与するポイントは旅行代金の2%だが、リクルートはこの2%分を販売手数料に上乗せし、宿泊施設に課す方針を打ち出したことで、怒りを買った。
例えば、2人以上1室利用では現行の8%が10%になり、シングルではシステム利用料率自体の引き上げと合わせて4%から8%に倍増させる。
3万円のシングルプランを、じゃらんネットを通じて販売した場合、リクルートに支払う手数料が従来の1200円から2400円となる。~「産経ニュース」より
リクルートは、利用者がポイントを使った場合、同社が現金を宿泊施設に振り込む方式とし、「2%分は実質的にその原資」と強調。プロモーション充実などによる施設への還元効果を訴え、理解を得たい考えだ。
しかし、宿泊施設側の不満のボルテージは上がる一方。
国際観光旅館連盟の近畿支部はリクルートの発表と同日に、「2%付与分をわずかな値上げであるかのように施設に説明しているが、負担率のアップは明確」と撤回を求める要望書を提出。
さらに今月5日には箱根温泉旅館協同組合も「組合員の疑念、不安が増している」として、協議申し入れ書を提出した。26日にはリクルートが公開説明会を開催するが、組合側は値上げの論拠の開示や負担減を求めるとみられる。
リクルートは来年3月まで契約施設への説得を続ける意向だが、「利用者の利便性向上は譲れない。納得できない施設の契約解除はやむを得ない」と“強行突破”もちらつかせる。~「産経ニュース」より
まさにリクルートは「強気」です。
その背景には、じゃらんネットの今年4~9月期の取扱高が、前年同期比18%増の1989億円に急増した事も要因。
旅行業界最大手のJTBに次ぐ規模に達しているのだ。
しかし、リクルート(楽天トラベルもそうだが)の、その「強気」を育ててしまったのは、皮肉にも今回の被害者(当事者)である宿泊施設に原因がある。
自らの集客活動を疎かにし、じゃらんネットや、楽天トラベルのような、簡単で便利なネットエージェントに丸投げしてしまった結果、彼らを太らせ、わがままし放題の怪物に成長させてしまったからだ。
リクルート社は、「利用者のためのポイントサービスの強化」としているが、別の見方をすれば、「じゃらんネットのさらなる集客力の増大」を狙っている事に他ならない。
そのポイントサービス強化資金を、そのまま宿泊施設側に負担させるという図式が今回の問題。
“言い方”次第で、いかにも美しく表現できるということだ。
私は、何度もこのブログや、ツイッターで、ネットエージェントの不合理、不道徳を説明してきた。
改めて、簡単に言えば、人は宿泊施設を検索する場合、ほぼ90%以上が「宿名(宿泊施設の名前)」で検索する。
じゃらんネットや楽天トラベルは、それを熟知しているから、「宿名」でリスティング広告(検索連動型広告)をうつ。
宿の公式HPは閲覧してくれるが、その中で、実際予約する人は、料金が同じであれば「ポイントが付く」じゃらんネットや楽天トラベルを通してしまうという不合理が発生するのだ。
もともと、販売(送客)手数料というのは、じゃらんネットのTOPページから、いくつかのページを経て、宿の情報ページまでたどり着き、そこで予約すれば、宿側がじゃらんネットに支払うもの。
しかし、それでは、数多くの宿泊施設へ集客できないから、リクルートや楽天は、「宿名でリスティング広告をうつ」暴挙に出たのだ。
そうすれば、まんべんなく、宿泊施設から販売手数料を受け取れる。
送客の実績を積めば、契約も解除されないというカラクリだ。
ヤフーやグーグルのリスティング広告は、もちろん無料ではない。
有料であるにも関わらず、なぜじゃらんネットや楽天トラベルはリスティング広告を止めないかというと、TOPページのアクセス数を考えても、許容範囲を超えた宿泊施設数を掲載しているから。
つまりキャパの限界をいっているので、有料でも「宿名でのリスティング広告」は欠かせないのだ。
無知な宿泊施設の経営者は、送客がどこからされたかの「分類」を見るだけで、どうやって予約されたかの「過程」を見ていない。
「自社HPを閲覧してもらったのに、予約はじゃらんネットでされた」・・・という事が、日常茶飯事で行われている。
それを知らずか、知ってて指をくわえていただけなのか、わからないが、きつい言い方をすれば、宿泊施設側も「自業自得」といった感は拭えない。
だからこそ、宿の生き残る道は、「脱・エージェント」と、事あるごとに言ってきた。
実際、私が手掛けたHPをフル活用しているお宿さんは、エージェント依存を脱却し、ほぼ自前のHPと電話予約だけで、客室稼働率90%を維持している。
自分で言うのもなんだが、「賢者の宿」と表現したい。
でも、じゃらんネットと楽天トラベルの天下が、ずっと続くとも思えない。
もしかしたら、あと4~5年でこの世から無くなっているかもしれない。
その根拠は、あることはある。
それはまた次回で、ある機会の折にご紹介するつもり。